科学研究費補助金・特別研究員奨励費「古代中近東世界における王の宗教的役割:紀元前2千年紀ヒッタイトの王権観を中心に」
研究の目的
本研究は、本研究の目的は、ヒッタイトにおける神々と人間の仲介者としての王の宗教的役割と独自の王権観を解明し、それを古代オリエント諸地域における君主像と比較することである。本研究では生前と死後における王の役割に着目するという以下の二方向からのアプローチを試みる。(研究1) 在位中の王はどのように神々の「神命」を受け取りそれを人々へ伝えたのか、(研究2) 死した王はどのように神格化され、いかに「神命」と王位が後継者へ受け継がれたのかについて考察する。研究1および2の結果明らかにされるヒッタイト王の宗教的役割を、メソポタミア諸地域における君主と比較することが最終的な目標である。
研究の方法
①原典の読解と分析方法:研究1では、王による神々への祈りの文書2点と国家祭儀の記録3点を主な史料とする。また、占い文書と夢にかんする記述、地方の祭儀記録などの関連史料を参照し、神々から王に下される「神命」の内容を確認し、それに従って王が神々を祀っていた点を明らかにする。研究2では、王の葬儀記録2点と王碑文約5点を主な史料とし、王の霊廟で行われる儀礼文書を参照しながら、死した王が神とみなされるようになる過程と、その統治権がいかに後継者へ継承されると信じられたのかという点を明らかにする。
②日本語翻訳:主な史料の全文と、関連史料の考察対象とした箇所は日本語に翻訳し、そのデータベースを作成する。